加齢黄斑変性(Age - Related Macular Degeneration: AMD)について

 加齢黄斑変性(AMD)は、網膜の黄斑部の外層にある視細胞が傷んだ為に、視野の肝心なところが歪んだり(変視症)、欠けて見えたり(暗点)する黄斑部疾患のひとつです。欧米では成人の失明原因の第1位の病気であり、日本では比較的少ないと考えられていましたが、近年増加しており、失明原因の第4位となっています。福岡県久山町スタディの有病率調査によれば、日本人のAMDの発病率は年々増加傾向にあり、人口の高齢化と生活の欧米化により今後は欧米並みに患者数が増加することが考えられます。

Age-Related Eye Disease Studies(AREDS): 加齢性眼疾患調査試験
 AREDSでは、AMDが酸化ストレスで生じる疾患であるという認識から、高用量の抗酸化ビタミンとミネラルの併用投与が行われました。AREDS2では、高用量のβ-カロチン投与が喫煙者の肺がん発症リスクを助長することから、天然色素であるカルテノイドのうち黄色い色素であるキサントフィルと多価不飽和脂肪酸であるオメガ-3脂肪酸の効果の検討が行われました。

AREDS/AREDS2: 主要な発見
(1)AREDSあるいはAREDS2サプリメントを摂取すると、intermediate(中期)AMDからadvanced (進行期)AMDへの進行リスクが約25%減少すること。

(2)AREDSあるいはAREDS2サプリメントはAMDの発症を予防しないこと。

(3)AREDSあるいはAREDS2サプリメントは白内障には効果はないこと。

(4)オメガ3脂肪酸サプリメントは白内障やAMDには効果はないこと。

(5)現在および元喫煙者は、AREDS2フォーミュラーを摂取し、肺癌のリスクを高めるベータカロチンを含むAREDSフォーミュラーを避ける必要があること。

(6)AREDSサプリメントはearly(早期)AMDからintermediate(中期)AMDへの進行を抑えることはできないこと。



■AREDS2 Supplements for Age-Related Macular Degeneration(AMD) National Eye Institute
 https://www.nei.nih.gov/learn-about-eye-health/eye-conditions-and-diseases/age-related-macular-degeneration/nutritional-supplements-age-related-macular-degeneration

■AREDS/AREDS2 Clinical Trials National Eye Institute
 https://www.nei.nih.gov/research/clinical-trials/age-related-eye-disease-studies-aredsareds2/about-areds-and-areds2

■Age Related Eye Disease Studies(AREDS)
 https://areds.org


 網膜細胞の細胞膜にある脂質が活性酸素やフリーラジカルの攻撃を受けて酸化されることがAMDの病因のひとつで、 脂溶性ビタミンであるビタミンEは、そのフリーラジカルなどを捕捉することで細胞膜を保護し、また、細胞内の核にあるDNAを守ってくれます。 そして、水溶性ビタミンであるビタミンC(アスコルビン酸)は、それ自体も抗酸化作用を持っていますが、フリーラジカルを捕捉したことにより 抗酸化作用を失ってしまったビタミンEを再生させ、抗酸化作用のあるビタミンEに回復させる役割も果たしています。
 AREDS1から、抗酸化ビタミンは、ミネラルとともに、AMDの酸化ストレスに対する防御因子として役割を果たしていると解釈されます。

 ルテインとゼアキサンチンは、抗酸化ビタミンと同様に活性酸素やフリーラジカルを除去する作用があると共に、可視光線のうち、 有害な高エネルギーを持つ青色光(ブルーライト)を吸収する特性があります。加齢と共に、網膜外層にある網膜色素上皮に光感応物質であるリポフスチンが蓄積されます。さらに青色光の暴露により、リポフスチンから酸化ストレスを誘導する活性酸素種(ROS)が産生されます。
 AREDS2から、黄斑色素であるルテインとゼアキサンチンは、AMDの酸化ストレスに対する抗酸化作用を有する防御因子であると共に、 青色光(ブルーライト)の攻撃因子を除去する役割も果たしていると解釈されます。

2024年05月08日 記