斜視と弱視について |
■ 乳幼児から斜視があると、眼の「位置ずれ」のみならず、立体的に物をみる機能の発達に支障を来します。また、斜視の種類によっては視力が発達せず、弱視(斜視弱視)を起こします。 |
■ 「早期に手術が必要な斜視なのか?」、「経過観察で済む斜視なのか?」、「手術の必要はなく眼鏡装用で矯正できる斜視なのか?」など、斜視の種類も様々です。
眼の位置ずれが気になる場合は、なるべく早く検査を受けることが大切です。 また、「眼性頭位」といい、上下斜視、とりわけ下斜筋過動(上斜筋麻痺)に、頭を傾げるなどの姿勢をとることも留意すべき点です。 |
■ 弱視にも色々な種類があり、眼鏡装用や健眼を「遮へい」することで、徐々に視力が発達していくことが多いのですが、治療が遅れる程、その発達も悪くなります。 |
当院における斜視検査 |
(1)大型弱視鏡による斜視角測定検査、融像域測定検査、立体視検査、9方向眼位検査 ■ 斜視の眼位ずれを測定します。 ■ 斜視の両眼視機能を評価します。 ■ 麻痺性斜視(眼球運動障害)の原因筋を同定します。 |
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(2)プリズム・カバーテスト ■ 遠見時と近見時の眼位ずれを定量します。 ■ 眼性頭位の原因筋を同定します。 ■ 麻痺性斜視や眼性眼振のプリズム眼鏡処方に用います。 |
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(3)チトマスフライ、ラングテストやTNOテストによる立体視検査 ■ 両眼を使って立体的に見えているか、「立体感」について測定します。 ■ ずれている眼が使われているか、「抑制」について検査します。 |
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(4)Bagolini(バゴリーニ)線条レンズ試験 ■ ガラスに線条のスジを入れた検査用メガネをかけて,光源を見せると,交差した線条の光が見えます。 ■ 左右の見ている中心がずれていないか(両眼の中心窩で見ているか)、「網膜対応」の異常について検査します。 ■ 両眼を使って同時に見ているか、「抑制」ついても検査します。 |
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(5)ヘス・チャートによる眼球運動検査 ■ 脳梗塞や糖尿病による麻痺性斜視(眼球運動障害)の原因筋やその支配神経を調べます。 ■ 筋無力症や甲状腺機能亢進症による眼球運動障害に対する治療効果を評価します。 |
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(6)ゴールドマン視野検査による両眼単一視検査 ■ ゴールドマン視野検査を用いて両眼で一つに見える範囲(両眼単一視)を検査します。 ■ 神経内科や眼科的治療により、複視が改善していく過程を評価します。 |
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弱視について |
(1)弱視の種類について 視覚感受性期(生後一歳半をピークに徐々に低下していく)に、視覚情報となる光が眼の内へ入り、網膜(黄斑部)に到達してから、その情報が脳に伝達されることが、視覚の発達に必要です。しかし、十分な情報が眼の中に入ってこない状況や、光が黄斑部でピントが合わない為に、良質な視覚情報とならない場合は、脳に伝達されても視覚の発達に繋がらず、良好な視力を獲得できずに弱視となります。 1)屈折異常弱視 両眼に強い遠視があり、両眼ともに近見も遠見もピントが合わない為に弱視になる場合や、片眼か両眼に強い乱視があり、近見も遠見もピントが合わない為に、弱視になる場合を「屈折異常弱視」と呼びます。 2)不同視弱視 片眼は軽度の近視、遠視、あるいは乱視で十分に視力は発達しますが、その瞭眼が他眼に比べて遠視が強い為に、近見も遠見もピントが合わずに弱視になる場合を、「不同視弱視」と呼びます。 3)斜視弱視 先天内斜視(乳児内斜視)、すなわち片眼性の恒常性内斜視(どちらかの眼が必ず内側にはずれている)の場合は、斜視眼ではその視覚情報が本来見るべき場所で見ていない為に(網膜対応異常)生じる弱視か、あるいは、脳に伝達されるはずの視覚情報が処理されない為に(抑制)生じる弱視を「斜視弱視」と呼びます。 4)視覚刺激遮断弱視 先天白内障、眼瞼下垂や視覚感受性期の眼帯使用により、十分な視覚情報が脳に伝達されない為に生じる弱視を「視覚刺激遮断弱視」と呼びます。 |
(1)弱視の治療について 1)眼に光を入れること 先天白内障があれば白内障手術を、片眼の眼瞼下垂があり視力の発達が遅れている場合は、眼瞼下垂の手術を考えます。 2)ピントを合わせること 小児は調節力が強い為、アトロピン点眼を用いて屈折度を把握して、遠視や乱視を矯正する為に眼鏡を装用します。ピントを合わせることで、徐々に視力が発達していきます。 3)眼の眼位ずれを治すこと 先天内斜視(乳児内斜視)では、早期に手術を行い、必要があればさらにプリズム眼鏡を装用して、眼位矯正に努めます。 4)鍛えること 片眼が弱視の場合は、脳への視覚情報を増やして鍛える為に、健眼をアイパッチで隠して弱視眼でどんどん見る様にします(遮蔽法)。他に、ペナリゼーションという点眼で行う場合もあります。 |
2024年05月15日 記 |